by 紙漉きの師匠
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手元の国語辞典の「伝える」の項には…代々受け継いできて、あとの者に・残す(教え授ける)。
「門人に秘伝を伝える」と、なっている。先日、左官の仕事を長くなさっている方が「十代は勉強。 二十代で修業を積み。三十代は働き。四十代で仕上げ仕事をし、五十代で次の世代に伝え。 六十代で引退し、七十代で遊ぶ。職人とはそういうものだ。でも俺は仕事が好きだから、七十 過ぎた今でも働いている……」と誇りを持って、少し寂しく語ってくれた。紙を漉くという職業を 選んで十五年。三十三歳という遅いスタートの私、当てはめてみれば働く世代の四十八歳。 仕上げ仕事の境地に程遠く、「伝える」世代に入ろうとしている。 縁あって小学校の教壇に立つことがある。きちんとした教育を受けて教壇に立つ教師と同じ 壇に上がって良いものかどうか迷ったが、先生の強い勧めで勇気を持って教師でなく職人と して子どもたちと接している。紙漉き授業に取り組んだ初期の頃、実は大きな失敗をした。全 員が紙漉きを体験し、最後の質問コーナーでの出来事。質問に答えながら必ず話すことが 六十年間紙を漉くという職業を選んだ私の師匠の江原土秋氏の人となりの紹介。ところがこ の時謙遜して「師匠に比べると私は紙漉きの世界に入って日の浅いヒヨッコみたいなもので す」と、話したところ、左側最前列の子どもが机に突っ伏した状態で一言小さくつぶやいた。 「なーんだ、俺らヒヨッコに教わったのか……」目の覚める言葉だった。それ以来紙漉きは一 子相伝であるから、あなた達は「私の子ども」であり「紙漉きの弟子」になりますと説明し「紙 漉きの師匠」と呼ばせ「おじさん」や「先生」と呼ばれても反応しないこととした。師匠モード全 開である。自信なく子どもの前に立ってはいけない、或いは謙遜などしてはいけないと子ど もに教わったことが大きな進歩である。 私も将来あの鏝(こて)職人のように七十過ぎても仕事が好きで働いていると、 さりげなく誇りを持って言えるようになりたいものだ。 江原師匠が黙々と七十過ぎても紙漉きをしていたように…。 ニッケコルトンプラザ 第2回「工房からの風」参加 2003年10月4日発行の冊子「はじまり・いま・これから」に寄せた文章を再録
by isyouko-bou
| 2014-06-08 23:02
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